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講演会H17
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日 時:平成18年7月3日
(第110回総会時)講演会
講 師:近畿大学理工学部教授 三星昭宏氏

「土木計画」、「交通計画」、「福祉のまちづくり工学」が専攻で、国土交通省ユニバーサルデザイン懇談会委員、大阪交通科学研究会会長、日本福祉のまちづくり学会理事、大阪市交通バリア
フリー推進委員会委員長などの要職を歴任され、交通バリアフリー法の成立にも尽力されてこられた講師が、映像を交えながら講演された。その概要は以下のとおり。
テーマ:
ユニバーサルデザインと道路

◆ユニバーサルデザインには「あらゆる人」──階層、民族、家族、身体条件、精神条件が関係してくる。ただ、精神条件というのは、デザインという形にするにはなかなか難しい条件ではある。また、人間には「あらゆる場面」がある。何をするときか、屋内か、屋外か、そういうことが関係してくる。「あらゆる時」──時間・天候、「あらゆる要因」──人・環境・生態もある。それらに対し、「あらゆる方法」で工夫できる。単純に一つの方法だけではないところが、工業生産品等のユニバーサルデザインと社会基盤のユニバーサルデザインとで性格の異なるところであり、設計施工だけでなく、様々な社会システムも一つの方法としての選択肢である。
 ユニバーサルデザインのポイントは、低コストにある。工業生産品であれば、特殊品と一般品を合体化させた共用品を造ることが、低コストのポイントになるが、まちづくりの分野で、それがどういうことに該当するのか考えていく必要がある。

◆まちづくりのフィジカルな側面は行政が担っているが、その行政は縦割りである。しかし、ユニバーサルデザインという考え方から見れば、デザインの方式が違うとか、府道、市道の管轄の違いとかそういうことは誰も考えない。それらに対して、当事者の意見を反映させるスキルが余り育っていなかった。

◆最近のまちづくりの中でユニバーサルデザインを考えていくときに見過ごせない一つの分野として、地域交通づくりがある。2002年道路運送法が改正され、バス、タクシーの需給調整が撤廃され、規制緩和がなされ、地域の交通に関してあらゆる工夫が出来る仕組みになった。地域交通づくりの一つとして、過疎地における交通サービスがあり、その中に福祉移送サービスと呼ばれるものがある。従来、高齢者や障害者に対しては、家の中だけのバリアフリーやユニバーサルデザインが論議されがちであったが、人権の観点からすれば、外出の手段、外出の足を確保することが、重要な課題であった。これが規制緩和により自由になり、福祉移送サービスも増えてきているが、これらの交通は、道路空間において、従来にない問題を生じさせている。現在のまちづくりの中で、駐車対策は重要な問題であるが、この福祉移送サービスは、タクシーとコミュニティーバスとの中間のような形態であり、利用者は、目的地の目の前に止めることが必要な人であり、5分間の停車時間の中では、運転者が介護を含めたサービスを提供することが不可能なケースが多い。現在のまちづくりには、このようなケースを想定したスペースを確保した道路や建物は基本的には無いといってもよく、ハード、ソフト面の課題が今後に残される。

◆道路のユニバーサルデザイン、バリアフリー化は、例えば、エスカレータを設置すること、段差を解消することではなく、高齢者や障害者の社会参加、さらに社会的自立が目標・目的である。
 道路の整備率が目標ではなく、当事者の自立がポイントである。福祉分野、交通分野、建築分野、まちづくり分野、これらを総合したユニバーサルデザインの考え方で、ユニバーサルなまちづくりを目標とした取り組みが必要となってくる。福祉分野についても、従来の給付・救済の福祉から、地域福祉という考え方に変わってきている。こういったユニバーサルデザインによるまちづくりは、当事者参加で行う。多数の人が参加してつくりあげていく。従来の、多数の人が入るとややこしくなるというのとは逆の発想であるが、「まちづくりのPlan Do Check Actionサイクル」といえる。いわゆる「螺旋的な発展」といわれるもので、まちづくりにおいても、この「PDCAサイクル」がこれからのポイントになると思われる。今までの行政の進め方とは本質的に異なる方法であるが、講師が提案する、『地域福祉を戦略にまちづくりを展開する』ことは、ユニバーサルデザインの、根幹を占める重要なコンセプトである。

◆2000年に交通バリアフリー法が成立した。当事者参加、市民参加を経て、JR、交通局、国道、府道、市道といった関係者が一堂に会して構想をつくり、これら全体を市町村が取り纏めることになった。これは従来にない概念であり、例えば、自治体が受けた、鉄道に関する要望を、鉄道事業者に仲介するだけでなく、同じテーブルで十分ディスカッション出来るようになった。
 参加型バリアフリーの事例と成果として、最初からユニバーサルデザインを標榜した、神戸中央突堤の船客ターミナルや阪急伊丹駅がある。これらは、講師が、整備検討委員長として取り纏めしたものであるが、東京にはない事例である。豊中市の場合は、移動円滑化基本構想をつくる中で、工事マニュアルをつくっており、公共的な場所を工事する際は、工事計画書を提出させバリアフリーチェックするようになっている。
◆先般、交通バリアフリー法が改正され、ユニバーサルまちづくり新法が成立した。この法律の予想される効果として、先ず、エリアが拡大して、大都市とその近郊では市全域の戦略を立てることが必要になる。併せて、対象施設が広がる。公共的建築物に対するハートビル法と交通バリアフリー法が統合され、建築物をつくるときには、移動円滑化基本構想に従い、あるいはこの構想の中の改善計画に従って、既存不適格についても改善していくことになる。さらに、対象者が広がる。知的障害者、精神病の人も法律の対象者に入れた。それから、市民提案制度が出来た。行政が基本構想を滞らせると、市民提案が出てきて、その提案は無視できない制度になっている。
◆道路のバリアフリー化への提案
 @縦断勾配3%以下、横断勾配1%以下とする
 A自然状態で静止できる休憩箇所を設ける
 B歩車道境界部に階段縁石を用いる
 C歩道を複合スロープ(勾配と平坦部で構成)の応用で設計する
 D排水性舗装を適用する
 E歩道のコーナー部にベンチを設置する


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